●脂肪分の多い食事とテレビ

 前号に引き続き肥満問題にふれます。厚生省が2月26日に公表した98年度の国 民栄養調査によると、15歳以上の肥満人口は推計で、2300万人にも達することがわかりました。 内訳は男性が1300万人、女性が1000万人となり、20年前に比べると男性の肥満人口は倍増しており、女性は逆に痩せ傾向にあるとみています。男性の肥満増加は、脂肪分のとりすぎに加えて運動不足と同省では分析しています。一方女性の痩せ傾向は、15歳から19歳にかけてきれいでいたい願望が、ますます強くなっていることを意味しています。

 調査は79年と98年で比較していますが、男性の15歳〜19歳は6%から11.4%、20代で9・2  %から19%。30代では16.3%から30.6%と肥満男性は倍増しています。30代 の激増ぶりは「成人病の若年化」へとひた走っているのです。女性の15歳〜19歳は13・5%から20.4%に、20代では14.4%から20.3%増加したものの、男性ほどの肥満傾向にはならず、「痩せ願望の女性」が増えていて、ダイエット志向に走っているようです。肥満傾向の人の第一の原因は、脂肪分の多い食事、運動不足となるわけで、こうした生活習慣を続けている限り、肥満によるガン、心臓血管病、循環器病などが、中年を待たずして発祥してくる、と専門家は見ています。

 米国・スタンフォード大学医学部の小児科と疾病予防研究センターの共同グループは、テレビ  やビデオ好きの子供に、肥満進行度は高いという研究発表をしています。毎日新聞2月5日で横田一記者は次のように伝えています。

 それによると96年9月から97年4月まで、カリフォルニア州サンノゼ市の小学3、4年生計192人(平均年齢8.9歳)のうち、92人が(介入群)はテレビやビデオゲームの時間を減らすように、教員や保護者の協力を指導し、残り100人(対象群)は普段通 りのテレビ、ビデ オゲームの生活をさせたのです。すると、対象群は介入群より脂肪のつき方が多かったことが、明らかになったのです。つまり、子供の肥満はテレビやビデオゲームによって引き起こされていることがはっきりしたのです。

 新潟県市町村栄養士団体は、県内に住む3歳〜5歳児の肥満・痩せ状況について、98年と99年に、それぞれ78市町村計4万235人を調べた(読売新聞)というのです。同団体協議会の代表の横尾美和子さんは「子供の肥満対策は、3歳児までの自治体の乳幼児健診で入学後は学校保健で取り組まれるが、その空白となる3〜5歳のころの肥満が、成人肥満につながっているのではと、現場で問題になっている」と話す。(同紙)

 こうした肥満要因については、大国 真彦日本大学名誉教授が、すでに30年も前から指摘してきたことですが、「親の自覚が重要」とも指摘されています。子供の肥満は親の責任という認識をもつべきなのです。

●動物性食品礼讃の意図は  

 こうした状況の中で、日本人の平均寿命の延びに黄信号がともされたとする見解が出されています。長寿・長命に肉食・牛乳礼讃をすすめる東京都老人綜合研究所の柴田博氏はあ、若い女性のダイエット志向が、長寿・長命社会に陰りを見せてきた、というのです。

 日本人の平均寿命を20年以上も世界一の座に置いてきたのは、結論から先にいえば、栄養状態の改善にあったからだ、とする都・老人老人綜合研究所の主張があります。(日本経済新聞1月29日)  

 厚生省の発表や米国の研究では、子供たちの食生活、とりわけ脂質の過剰摂取と運動不足による肥満傾向に警告を発していますが、都・老人研の柴田医博は 「肥満の元となる脂質の取りすぎがよく言われるが、この20年間に4g(36kカロリー)しか増えていない。食生活の欧米化が進む中で、肉など動物性タンパク質の採りすぎが警告されてきた。これに多くの国民が脅かされ結果 として次世代を担う病的なダイエット志向を生みだしているのである。」(同紙) と同氏は肉食礼讃、カロリー偏重を訴えるのである。  

 したがってこれまで(日本)の長寿を支えてきた最大の要因が、栄養状態の好転にある、と結論づけ、一部の医学者が「医療技術の進歩が寿命を延ばした」と主張するのは間違いである、とし食のライフスタイルにこそ、病気やその因子を減らす要因があると思う、と柴田氏は語ります。 戦後の日本人のヘルスライフの向上は、細菌などに対する医療技術の貢献は否定できません。たんに栄養状態の好転だけと極論するのはどうかと思います。  

 では、柴田氏がいう食のライフスタイルの変化によって、長寿・長命がはたされたとしても、なぜこうまでも難病・奇病、慢性病は増えつづけるのでしょうか。統計的な処理による長寿・長命人口が増えるか、減るかというよりも、国民の実質的な健康度合いのスケールを見なければ、真の長寿社会とはいえないはずです。  

 石原都知事が都民の健康阻害の最大因子が、バスやトラックなどディーゼルエンジンが撒き散らす公害物質だ、とようやく動き出しましたが、国民の造病食である有害加工食品の排せきにもひと役買ってもらいたいものです。  

 その意味から牛乳、乳製品、肉食礼讃のと老人研にメスをいれ、都民、国民の健康志向の本質をあばくくらいの「石原(マクガバン)報告」を期待したいものです。


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