健康ファミリー 2001年10月号掲載

●ぎんさんの死と平均寿命

 双子の姉妹で国民的に親しまれた「きんさん・ぎんさん」の妹、蟹江ぎんさんが、 今年の2月28日、108歳で亡くなり、遺体の解剖結果が主治医だった室生昇名誉 院長(南生協病院)や愛知医大の橋詰良夫教授(神経病理学)から発表されました。 (各紙)

 その結果は、脳や全身(各臓器)の動脈硬化はほとんどなく、ガンなどの病変もな かった。脳の血管系だけをいえば60〜70歳の人に比べても変わらない。心臓病、 脳血管疾患、悪性新生物という中高年期の3大死因をすべてクリアしていた、という もので、100歳を超える長寿の条件の見本となる例です。それでもアルツハイマー 型老年痴呆症が中から重程度に見られたそうですが、亡くなる数カ月前の言葉のやり 取りは、素早く明瞭だったわけですから、見事な大往生といえるでしょう。

 厚労省が「2000年簡易生命表」を公表しましたが、女性84・62歳、男性7 7・64歳に平均寿命が延びたことになります。つまり、平成12年の0歳児が、男 女共に肉体的、精神的に欠陥を負わなければ、平均寿命に到達できるという計算値で す。

 ところが、これまでの死因別からみると、平成12年生まれの男の赤ちゃんが、将 来ガンで死亡する確率は30・02%、女の赤ちゃんが20・28%。次いで心疾患 が男0歳で14・43%、女18・60%。脳血管疾患が男13・13%、女16・ 92%(朝日新聞8月3日)という内容です。

 こうした数字を眺めてみると、約半数の人が、ガン、心疾患、脳血管障害などで死 んでゆくことがわかります。人生約3万日といわれますがすでに80歳を超えて元気 に活躍している方は、余勢をかって100歳を超える余生を、大いに楽しんでもらい たいものです。

 しかし、現実は30歳くらいで若年性痴呆症が出たり、血液のガンといわれる白血 病などの難病、奇病に冒される人もいます。現代医学は高度医療技術を駆使していま すが、対症療法の域を出られず、患者は、苦痛のみを背負わされる結果となります。  

●おまかせ医療の限界を知る

 こうした医療費を考える時、国民医療費が30兆円の大台を超え、そのうち50% を65歳以上の人々が使っているという発表には、少々腹が立ってきます。聖域なき 改革を唱える小泉内閣は、医療費の抑制にも取り組むわけですが、医療費を喰い物に しているのは患者ではないからです。

 一方「無駄な医療費の抑制」について、東京薬科大学教授の岡希太郎氏(臨床薬理 学)が朝日新聞(7/25)の私の視点でこう述べています。「日本の医療費は二つ の大きな無駄がある。第1がタバコ。タバコが原因で発病したぜん息や肺ガンなどの 治療費が、ドイツでは年間3兆5千億円、米国では同7兆3千億円を要している。日 本の喫煙人口はドイツの1・4倍、米国の0・6倍。日本の無駄は年間4兆4〜9千 億円と推定される」といいます。
 「第2は医薬品。投薬による肝障害や腎障害といった副作用。アリゾナ大薬学部の調 査(95年)によると、外来患者が薬を服用したために入院するケースは、少なく見 積もっても3兆円、最大13兆円」と出ました。「薬原性疾患」という用語も定着す るほど薬による2次的な疾患の増加は深刻です。副作用と違って、患者が気付きにく く、新たな疾病を生じる危険性をはらんでいるのです。

 「医原性疾患」という言葉もありますが、医療をうけながら、新たな疾病が生じてく るという意味では、薬原性も医原性も共通点は「無駄な医療」にあると見るべきです。  医療費の高騰に対して、その抑制策の一つとして、国民には保険料や自己負担分の 引き上げを強要してきました。先の岡東京薬科大学教授は同紙で「国民は医療の恩恵 を受けるために、副作用に気づく努力をもっともっと払うべきだ。自分の体の変化に 気づき、専門家に問いただす努力を怠ってはならない」と述べています。つまり、自 分の健康や疾病に対して、もっと責任と自覚をもって対応せよ、というわけです。そ れには、日頃の健康管理には食生活を第1に、精神(心)、運動(行動)に注意を払 い、医療機関にかかる時はおまかせ医療ではなく、自分の身体の変化に対して、医療 側に問いかけてゆく知識をもちなさい、と言うわけです。

●半数が医療不信に

「医療再生」のシリーズを組む日経の(8月15日)は、次のような問題点を投げか けます。「医師向けの専門誌PHYSCIANが一昨年実施した患者アンケートによ ると、47%が『診断や治療内容に疑問や不信感を持った』と答えたが、51%は医 師に伝えていなかった。理由(複数回答)は『言いづらかった』(52%)、『聞け る雰囲気の医師ではなかった』(37%)など。伝えた時の医師の対応は、約半数が 『冷たい』と感じていた」とあります。

 こうした患者と医師の葛藤は、絶え間なくつづくわけですが、さらには薬の副作用 も絶えずくり返されているのです。脳こうそく治療薬パナルジン(一般名・塩酸チク ロピジン)の副作用(400例弱。うち34人が死亡)「高カロリー輸液点滴」で4 1人が死亡という副作用問題は、医薬品の副作用被害に対する緊急安全性情報が出さ れていても、現場の医師の認識度合によって、患者への対応に違いが生じているので す。

 高脂血症治療薬(バイコール/セルタ)と他剤の併用で52人も副作用死の報告が 出ました。医療費高騰の陰に悲劇は多数ありますが、その前に、自らの食生活を改善 し、血液の質を高めて健康細胞に造り変えるという日々の努力があったならば、こう した不幸にあわず済んだのではないか、と思わずにはいられません。


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