健康ファミリー 2001年12月号掲載

●乳牛・ミルク製造器の哀れ 

 8月に千葉県で初の狂牛病の乳牛が発見され、10月12日に都内で狂牛病の疑いのある牛が判明、シロとはなったものの不安は拡大しました。10月18日に全国一斉の狂牛病感染検査が行なわれたのはご存じの通り。

 牛肉の売り上げが3〜7割も落ち込み、85%の人が狂牛病に不安を感じ、焼肉店やハンバーガーショップなど牛肉を出す外食店を「利用しなくなった」人、「利用をためらう」人を合わせて57%に上った(朝日新聞10月16日)と報じます。

 消費者の85%が「不安」に感じるのは当然としても、農水省「お墨つきの安全宣言」とやらを出せば、牛乳や焼肉で育った人々はすぐにも消費回復隊に加わって、肉市場の支えになるわけだから、「不安」と「消費影響」は解消されるはずです。

 さて、英国の狂牛病対策の専門家レイ・ブラッドレー博士が、朝日新聞10月17日のインタビューに答えて大変に興味深いことを発言しているのでご紹介しましょう。(要旨)

「日本での狂牛病感染は自国内とみるべきで、汚染された飼料が広い範囲で使われた可能性も否定できない。肉骨粉を介して『感染のリサイクル』が起きている可能性さえある」と。つまり、すでに狂牛病にかかっている牛を処理して、肉骨粉を牛に与えてきた結果、感染が次世代の牛に拡がっている可能性を指摘しているのです。それは、「英国で乳牛の子牛は生まれて2週間目から人工乳を与えられ、その中に肉骨粉が添加されていた。これが英国での感染の原因。一方、肉牛は母牛の乳で育てられる。したがって狂牛病発生が肉牛より乳牛に多いのはこのためだと推定されています」と言います。

 乳牛の子育てに人工ミルクと高たん白、高カルシウム飼料が使われていたのです。早く大きくして、大量の牛乳を出させるための方法をとっていたのです。こうした方法は日本でも同じなのですから驚きです。
 毎日新聞10月8日の「余録」でこう指摘します。「20年前の生乳の生産調整を機に、生産者の収入増を目指す増産策が強化されたせいだ。本来の乳量は年に3500`前後なのに、無理やり1万`近くも搾り取る。放牧はせず、狭い牛舎で高栄養の配合飼料をひたすら食べさせ、太らせては搾る。家畜というよりミルク製造ロボットだ・・・・・・」

「肉骨粉」という場合、牛の骨を炭状に焼いた「骨炭」や血を加工した、「血粉」、骨を高温・高圧で処理した「蒸製骨粉」などを指すようで、用途(牛の種類や年齢による)によって配合比を変えるようです。毎日新聞(10月17日)によれば、「ある肉骨粉業者は、消費者が脂肪分3・5%の生乳を欲しがることが背景にある。蒸製骨粉を扱っていた業者は、酪農家には、乳の出がいいと喜ばれた」と証言しています。

●ミルク信仰と高栄養食の弊害

 そこで人間にもこうした育児法が適用されていますので、「人工ミルク・高栄養育児信仰」について考えてみましょう。朝日新聞10月12日、(くらし・学芸部森川敬子記者)「母乳で子育て支えたい」とのリポートがあります。「本人は母乳で子どもを育てたい、と思っていても“母乳が足りないんじゃないの。ミルクをあげれば”という周囲の一言で挫折する場合が多い」と。そのよけいな一言は「ミルク信仰で育った祖父母にある」と指摘します。

 新米ママとしては、「赤ちゃんが泣くのは母乳が足りないせいでは」と不安がり、周りにいるオトナたちが「ミルクをあげたら」とおせっかい役を買って出てくるためです。新米ママ自身も人工ミルク育ちで、高栄養高たん白食を口にしてきたならば、自らの子育ても早く大きく、といった感覚が働くのは当然かも。

 ファーストフードの店に来る新米ママと2〜3歳児を見ていると、例えば昼食や夕食の時間帯にもかかわらず、ジュースにハンバーガーを幼児に食べさせているから驚きます。筆者が驚くのは勝手で、「それが当節の常識だ」と言われてしまえばそれまでですが、子牛を育てる方法にも似て哀れさを感じてしまいます。

 離乳食がすすんですぐにオトナの食べ物を口にさせ、味を覚えさせたら一気呵成です。就学前には立派な動脈硬化の芽が出て、小学生で肥満傾向が止まらず、「生活習慣病」へ邁進することになります。

 わが家の玄米自然食の育児実践法は1969(昭和44年)に始まります。母乳の出が少なく、3カ月ほどで人工ミルクです。この人工ミルクは、玄米乳。玄米のオモユにゴマや魚、野菜のエキスを抽出してまぜ、適当な濃度にして、時に薄くして与えるという方法です。長男は当時の母子手帳によると、保健所の検診で3歳まで女児並み。予防接種は種痘1期、ツベルクリン反応とBCG接種2回、日本脳炎2回のみで、ハシカは自宅一室で隔離療養。離乳食になって玄米をすりつぶし、野菜、海藻、魚肉と果物などで育てたのです。下痢はしやすかったものの、3歳以降病気らしい病気はしていません。

 次男の時は、長男のハシカの苦労に親が耐えられず、ポリオ生ワクチン1回、BCG接種1回、ハシカ1回の予防接種のみ。やはり、母乳が足りずに、玄米乳と乳児用豆乳(三育フーズ製)のミックス。体重は5カ月を越えてから増え始める。

 離乳食は長男の時とほぼ同じ。玄米をベースに野菜、海藻、魚が中心です。水は塩素を飛ばした生水。夏は沸かして作った麦茶。小学高学年になって出かけた先でオレンジジュースなどを飲む程度。外食は親が選んで与えるのが基本で、子どもには選ばせないのがわが家の流儀でした。

 つまり人工ミルクと高たん白、高カロリー食でなくても子は育つわけで、体ができ上がる前までは、親が食の選択をする義務があるということを知ってほしいのです。


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