健康ファミリー 2001年2月号掲載
◎実験動物にされた日本人
欧州最大といわれる、仏スーパーの「カルフール幕張ショッピングモール」が12月
始めに開店しました。テレビや新聞などでは「安さ」を売りものの第一号店ができた
と報じ、この1月には東京・町田市と大阪和泉市にオープンするようです。食料品から
衣類、化粧品と揃え、当然仏産牛肉も並べての商戦です。
英国での狂牛騒ぎは1998年に起き、終息に向っていた矢先の仏狂牛病騒ぎは何を
意味にするのでしょうか。
英国での狂牛病騒動の時、当欄でも書きましたが本来草食動物である牛に、牛や羊など
の骨や肉を粉砕して、植物性肥料に混ぜ合わせて与える方式がとられていることに問
題があったにです。草食動物に動物性肥料を与えることで、飼育効率を高めることを
ねらっているのです。英国での狂牛病騒動の時、償却処分されたはずの牛肉がヨーロッ
パで売られた話が報道された時は、もしや日本にも、狂牛病病死肉が上陸しているので
はないか、と愕然としたものです。
当のフランスでは、英国産狂牛病肉を締め出し、安全性を高めて欧州各国へ輸出までし
ていたのです。ところが、英国狂牛病の動物性肥料に問題があったにもかかわらず、そ
の教訓が生かされず、動物性肥料による狂牛病発生につながっているのです。
こうした狂牛病対策に、たんぱく質の補給源として大豆に注目が集まっています。その
大豆の最大の原産国は米国ですから、遺伝子操作(組み換え)の大豆が肥料として大量
に使われることになるのです。
EU諸国では、米国産遺伝子操作の大豆の規制をしているわけで、肥料用とし輸入規制を
緩める方向になることでしょう。
いっぽう、米国では、肥料用のみにしか使用が認められていない遺伝子操作(組み換
え)トウモロコシ「スターリンク」が、米国内で食材に使われ、スターリンクが混
ざった食品を食べて、体調を崩したと訴えた34人を調査したところ、7〜14人に食
物アレルギーを起こした疑いが強いとの結論に達したと報告されているのです。(読
売新聞12月 6日)
ところが、日本では、この「スターリンク」は食用にも資料用にもともに輸入を許可
されていません。しかし厚生省の独自の調査で、サンプルの4割、量
にして約3万8 千トン分のトウモロコシの混入を確認(朝日新聞11月15日)した模様です。飼料
用から食用にその大半が消費された可能性が高く、牛や豚、鶏肉や油に、牛乳や卵、
デンプン材料などに姿を変えて混入しているのです。
“知らぬは消費者ばかり”なのです。狂牛病肉やその肉加工品にしても、闇から闇に
出回るわけです。日本での「スターリンク」の輸入くぐりぬ
けも、輸入商社のチェッ クの甘さが指摘されていますが、それを使用する大手メーカーの、遺伝子操作食品に
対する考え方の甘さもあって、「売ってしまえばあとは儲けだ」の構図が働いている
と見るべきです。
◎安売り肉に群がる若者
消費者の考えの甘さは、狂牛病や遺伝子操作(組み換え)作物に対する認識の不足が
あります。
朝日新聞12月2日付けの「くらし」報道は、「狂牛病・EU(欧州連合)内を自由移
動)」、日本では「輸入牛・外食産業で一人がち」と題して、その実態をレポートし
ています。
輸入牛肉を使った首都圏での外食産業では、安さを売り物にしてチェーン展開する所
が続出。年間の輸入量は1985年度は15万8千トンだったのが、99年度には6
8万3千トン、国内生産量はそれぞれ14万5千トンと17万5千トンです。
肉の輸入価格が安くなったことで安売り店の展開ができるのでしょうが、すでに外国
では遺伝子操作の農産物を飼料として、牛や豚、羊などにたっぷり食べさせているの
ですから、アレルギーの危険性が高いトウモロコシを食べた動物の肉は安全なので
しょうか。それを知ってか知らざるか、そんな肉も何のその、といった状態です。こ
うして消費者の甘さに乗じて、輸入商社も加工業社も、建前では認めていない厚生省
を甘く見て、陰でこっそり輸入したのでしょう。
「粗食のすすめ」を理解できる年代と、「美食・飽食のすすめ」を提唱する年代の違
いが、はっきりと分かれるのは仕方ないことです。体のことを考え頭で食べる人と、
目と胃袋で食べる人たちの違いは明らかです。しかし安いからといって、どんな肉か
わからず食べつづけることの弊害も知ってほしいのです。
本誌では、若い人たちが穀類から摂取するカロリーより、動物性たんぱく質と油脂類
から摂取するカロリーが増えていることで、血液の質の変化が起きて、ガンや難病の
発症につながる危険性が大きくなることを訴えているのです。
安売りの肉だからといって、子供たちを巻き込んで食べつづけた時、その子供が成人
する前に、すでにガンや心臓病、脳血管障害などの生活習慣病を背負い込むことにな
るのです。焼肉を主に食べることで、本来の主食であるはずの穀類は隅に寄せられ、
野菜類はほんの付け合わせのものになって、胃袋の中は肉詰め状態になってしまいま
す。
こうした胃袋にスナック菓子や甘味料、ジュース類を流し込んでいれば、本誌連載の
大澤博岩手大名誉教授が指摘するように、米国型の精神構造薄弱な青年が育つことに
なるのです。
17歳を中心にした青少年たちの連続した殺人事件や乳幼児虐待事件の続発は、高度 経済成長がもたらした弊害のひとつと見ることができるのです。21世紀の初頭か
ら、こうした構造を断ち切る行動にでる必要があると思います。
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